石畳を軽やかな足取りで進む
黄金色のしっぽがふわふわと揺れる。
「ヘルモーズ、ごらんよ!この夕焼け…なんて美しい色なんだ!」
珍しく興奮した様子を見せる白い獣
黒い獣は静かにその白を追う。
「オレはお前の瞳の方が好きだ」
光をたたえた鴇色の瞳は星屑を宿したようにきらめいていた。
「君は本当に気障だなぁ。そこまで来ると興ざめだ」
なんとも稀有な、美しい夕暮れだった。
薄闇に浮かぶ白い月、夕暮に映える浅蘇芳のひかり
全ては調和し、風は凪ぎ、黄昏が世界を支配する。
そして、幾許かの時を経れば、射千玉の夜が黄昏に代わって世界を埋め尽くすだろう。
そうなる前に――早くしなければ……
「―――ヘルモーズってば」
「…ああ、すまん。聞いていなかった」
「まったく…何を考えていたの」
「大したことじゃない。今日の夕飯はシチューなんだが…手を滑らせてニンジンを入れてしまってな」
「ヘルモーズ、君ってやつは…そんなに百叩きをしてほしいのかい」
幾百の闇が訪れようとも―――
其れが終焉でない限り
握り合った手は
やがて彼らをどこへ運び
そこに何を残すのだろうか