「調子はどうだ、バルドル」
「ああ、大分楽になったよ。ありがとう」
ベッドに横たわる青年は弱弱しく微笑んだ。
ふわふわとした金髪を揺らし、鴇色の瞳で窓の外を見遣る。
「僕は…」
「どうした」
「…なんでもない」
静かな時間
鳩の声が哀しく響く。
「バルドル」
「ヘルモーズ」
どちらからともなく―
存在を確かめ合うように名を呼び、ぬくもりを分かち合うように指先に触れる。
固く握りあった手と手を頼りに、二匹は距離を縮めた。
「こわいよ…ヘルモーズ」
胸の中で子供のように震える恋人を優しく宥める。
華奢な首筋は蒼く、夏の陽射しの下で尚一層儚く見えた。
「バル――大丈夫だから…オレがいるから」
ああ、神よ。
何故この美しい青年に枷を負わせ給うたのか。